65 ライフ・イン・メイドンヘッド

 メイドンヘッドという田舎に移り住み約2ヶ月がたとうとしています。ここいらでわたくしの田舎暮らしを紹介してみましょう。メイドンヘッドはロンドンからまっすぐ西へ、バークシャー県という郊外です。バークシャーというのは黒豚の一種であるらしく、ここらへんの名前からして農産物が豊かな田舎色が漂います。羊でも有名らしいということです。黒豚はまだお目にかかったことも食べたこともないのだが。
 ロンドンはパディントン駅から列車で約40分。十分都会への通勤圏内にあります。そんな近さにありながらテムズ川沿いのこの町は自然がいっぱいです。町の中心は鉄道駅から徒歩5分くらいのところにあり、典型的イギリスの町。判で押したように真ん中にハイ・ストリートが走り、主な店・銀行やレストランが固まっていて、200メートル四方の中ですべての用事を済ますことができます。大きなショッピングセンターもあってロンドンにある主なスーパー、店はすべてあり、凝縮されています。
 けっこう立派なタウンホールがあり、その向かいにはツーリストインフォメーションを兼ねた図書館。これもけっこうモダンで立派な建物です。車に乗らない(乗れない)わたしには公共の交通機関だけが頼りですが、地下鉄はトーゼンないので、バス。バスは近郊の町・村をたてよこにつなぎ運行していて、ウィンザーにもバスで行けるのですがなにせ田舎。1時間に一本という便利さでございます。しかも午後6時には最終バスとなっちゃうもんね。これは町のお店も同じ。都会に慣れたわたしは花金の夕方、仕事が終わってさあ、週末の買い物でもしようかと町へ繰り出しました。しかしハイ・ストリートには人影もなく、ゴーストタウンのようです。
 なぜなら店はみんな閉まっていて開いているのはパブとかレストランとかいう食べ物関係だけ。ふつーのお店は5時おそくても6時には閉まってしまうのよ。平日わたしが勤務を終えセンターにたどり着ける6時すぎに開いてる店はないというわけです。
 ロンドンではたとえばオックスフォード通りは木曜日がレイトショッピングデーと称して8時ごろまで店が開いているのですが、ここメイドンヘッドでは木曜日唯一某 M&S だけが7時まで開いています。しかし7時前に入ってもほとんど買物客はいません。レジのおばさんも暇そうにしていて『ああ、あと10分で家に帰れるわね』なんて言い合ってたりするのです。
 ところが平日の夜の静けさとはうらはらに、土曜日の昼。平日も。ハイ・ストリートはひとであふれ活気づいていました。よくこんなにひとがいたんだなあ、という感じ。年寄り・若者・子供を連れた家族連れ。土曜日や日曜日はマーケットが出たりもします。引っ越してすぐにファーマーズマーケットが出るというサインを見つけ行きました。マーケット大好きなもんでね。タウンホールに程近いいつもは町営駐車場がマーケットになり、地元の野菜や肉や魚やさんがストールを出しています。やはりここでバークシャーを感じるわね。家の近所だし(というより小さい町だから)至極便利。新鮮な卵や自家製ドーナツやらの店がでて、サイダー(りんごから取るりっぱなアルコールなんであるが)をタンクで売りに来てるひともいました。ドラフト生ビールならぬ、生サイダー。翌週も期待していたのですがどうも月に一回だけらしいです。新鮮な野菜やオーガニックの肉屋さんたち。『ます』だけを売ってる魚屋さんもあったりして。いろんな種類があるし、値段も違っていて、どう違うの?と聞くと、鱒の燻製3種類、まるままのスモーク、切り身のスモーク、生の切り身、それぞれ『大・中・小』とあったのでした。
 自慢したいのが自然。町中にも、町を離れて10分も歩けばテムズ川にぶちあたるが、素敵な公園がたくさんあり、散歩道もたくさん。テムズ川にはカナルボートやけっこう大き目のプライベートボートなどが悠々と泳ぐように走っています。レガッタやってる体育会系、ひとりでてこぎでカヌーボートのひと、自動のボート、カナルボートなどいろいろ。セルフドライブの貸しボート屋もあるようです。

 メイドンヘッドはマーローやレガッタで有名なヘンリー・オン・テームズにも近く基地のようになっています。もちろん、ウィンザー・イートンへも車であれば20分ほどの距離。








 テムズ川はゆったりと流れていて、川沿いは散歩道で柳や木々の間を川の中にいる鴨や雁たちと同じように散歩するのは気持ちがいいものです。川の流れに沿い、水の色も流れの速度も日によって違う。天気がいい夏の日は透き通る抹茶色で、このごろは秋の気配でよもぎもち色かな。草だんご色のときもあり。たべものの例えばかりですんません。大雨の後などは茶色く濁っていることもあったけど、おおむね、景色を見ていると飽きないくらい癒されます。何も考えないまっちろな時間。サファリのようにあちこちにいるとりたちも見てるとおもしろいの。川辺を散歩してるかと思うと突然水に入る鴨や優雅に自分の姿を水に映しながらおっとりと浮かんでるかのような白鳥。けんけん、と言いながら飛び出す雁の一団やら。頭を水の中に突っ込んで水面にでているのがおしりだけで、それが三角に立ってえものをあさってるのとか。仲が良さそうにつがいで並んで泳いでるのとか。まさにバードウォッチングです。


 天気のいい日曜の午後、軽い運動がてら歩いて15分ほどのところにある川沿いのお気に入り公園に行くのが楽しみの日々でございます。ここも住宅の中にあって、一瞬個人の庭かと思いきや、だれでも入れる公共のスペースでした。広い川沿いに公園があり、小さな中ノ島に橋を伝って渡ることができます。向かいに目を向けるとボートハウスやボートも備えてる瀟洒な邸宅街です。家の玄関からそくっと川へボートを流せるっつう。きゃあ、優雅だわ。ここでは時間はおもいきりマイペースに流れ、ばたばたするのがばからしい、とも思えてきます。


2008年10月19日          
© Mizuho Kubo , All rights reserved…..October, 2008

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