2 ウォレスコレクション見物記
多分、村野先生が思っていらっしゃる「ウォレスコレクション見物記」とはかけ離れてるものになるとは思うのですが、よろしいでしょうかね。はは。
また「くぼみずほ」読者のみなさま。村野せんせいというのは「なぜわたしがロンドンきまぐれ便りを書くハメになったか」のテーマ時に重要人物となりますので今からこの方のお名前は覚えておくように。それでは、いってみます。
注)「この色は村野ガイドの説明より引用」
9月8日 ロンドン。天候:晴れ。ロンドンにはめずらしく秋の晴天なり。
青空のもと、村野とくべつガイドに魅かれ(引かれ?)、ひごろ村野せんせいに紀行文の材料提供をしている旅行会社の予約スタッフ(ほとんどが見目麗しく、若い女性スタッフということにしておこうかな?意義のあるひとはのべよ)5人が集まりました。
専門的ガイド・説明は、たとえばイギリス在住のみなさま、もしくは日本のみなさまなら、ロンドンにいらっしゃる折に、親切懇切丁寧な村野専属ガイドの説明を聞いていただく方が、わたくしなどの素人が僭越にも説明するまでもないのですが。それは村野ガイドに任せるとして、わたくしはしろうとの視点から述べさせていただこうと思います。
Wallace Collection とはなにぞや?
ひとことで言ってしまうと、Wallace さん、というおっちゃんが(なんて、親しそうに言うけど、えらい貴族なんです、これが)えらいというのは、Noble でも Great でもなく、Much てとこかな?
ますますわからん。ま、ひとくちに貴族といってもほら、ヨーロッパ社会のこと、いろいろあるんです。これまた説明してると一冊終わるので、とりあえず、適切な日本語訳かどうかわかりませんが、侯爵さんってとこかな(イギリス英語では Marques Wallace)。この方は「正真正銘のかねもち」ま、親からもらった財産にまかせていろいろ買っては集めたんですな。
落語みたいな出だしになってしまいましたが、イギリス人というか、こっちのひとって、とかく収集癖があるひとが多く、なんでも集めます。わたしはアンティークを見に行くのが好きで、いろいろとそういうコレクターズ・フェアなんかがあるとヒマもないのにロンドン中、近郊、行ってますが(もちろんお金はないので買いません。いや、買えません。目だけ肥えます。。。。)。
昔の貴族(今の貴族もか?)って、いろいろ集めては飾っておかれるのがお好きなのですね。ま、お住まいもご立派なので、置くものもたくさん立派なものが必要となる。
ステイタスでしょうね。
タンス、椅子、テーブル、書棚などの家具、と、忘れちゃいけない絵画などの調度品。これもそのへんの画家の作品とちゃいます。ヴァン・ダイク、ルーベンス、ブーシェ、フラゴナールなどなど。本物でっせ、ほ・ん・も・の。
いくらで買ったか、というのが、当時巷で話題になったり、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズの小説の中で、書いたっつうんですから、そのくらいの価値ありの絵画だらけです。
まだまだあります。シャンデリア、陶磁器も。はんぱなもんやおまへんで。これが。
みんな、貴族・王族のいわく因縁付き。
当時の内装そのままに、復元しているところも多く、こういう背景だと、なるほど、こういう家具なんかがないと様(さま)にならんよなあ、って感じですけど。
特にウォレス館(こんな言い方をすると、村野ガイドにおこられてしまうかもしれませんが)でわたしたち平民が今21世紀の世に自分の裸眼で見れるコレクシオン(フランス語っぽく発音してね)というのがなんと、フランスのものが大半で、また有名なのです。
価値があるから有名になるんですね。がらくた集めてもだめやもん。半端じゃない!
それも主なものが、18世紀ルイ14世のフランス革命前後のもの。
イギリスのロンドン。シャーロック・ホームズの舞台となったベーカー・ストリートからほど近い、こんなところにこんなお屋敷が、という街のど真ん中に、ウォレス館があります。もともとはハートフォード侯爵が住んでいて、Hertford House と呼ばれ、昔貴族たちが住んでいた19世紀のあたりまでは、辺りは森だったので狩猟館として生きていたのです。住所のマンチェスター・スクエアから、Manchester House と呼ばれていたそうな。
このハートフォード侯爵というのはヘンリー八世のお后のひとりジェーン・シーモアの兄弟にまでつながります。その子孫ウォレス卿はいわゆる庶子で、爵位は継承できなかったのですが、財産はほとんど継承したとのことです。
考えても見てください。
2001年に、ロンドンのど真ん中で、18世紀にできた狩猟館の中に、ルイ14世や、マリー・アントワネットが使っていた、家具が見られるんですよ。ヴェルサイユ宮殿には今行ってもないのに。
マダム・ポンパドール(ご存知ルイ14世の愛妾)が使ったほんわかピンク色がとってもキャピキャピっていう、今の陶器と土がちがい、つくるにとっても苦労がいる、というソフト・セーブルの陶器のお茶セットや、ロシアのエカテリナ女帝が注文したという「お客様おもてなし用600ピースセットの一部」なんてのが見られるんでっせ?
「わたしはこのターコイズ・ブルーが好きなんだから、この色にしてね、600セット」ってさらっと注文してみたいもんやわ。一生に一回でええから(またちよっと興奮しとります)。
わたしゃ、個人的にはマリー・アントワネットの家具の趣味の方が、好きかな。シンプルでね。ごてごてしてるロココスタイルよりは上品で気品があると感じます。
こういうのを見るのも、ただ見るだけより、説明を聞きながら事情をわかりながら見るともっと興味が増しますね。
たとえば、二番目の部屋にある、唐草模様のようなロココ様式の飾りのついたルイ14世の部屋にあったという「引き出しのあるテーブル」。
「彼が熱にうなされて、死の床にあったとき、昔は灯りはろうそくだったので、このテーブルの模様が、ろうそくに照らされ、地獄の炎のように見えた」そうです。ふむふむ。
上の階に行く、ご立派な階段の踊り場を上がると、大きなブーシェの絵が。ポンパドール夫人御用達というこの絵描き。ピンクの好きな彼女の好みとおり、全体にパステルピンクというか、ピーチ・オレンジがほんわかしてます。太陽神アポロンをルイ14世に見たて、「朝のはじまり」と「一日の終わり」を描き、アポロンを両手をひろげ、迎えている(のか追い出しているのか?)女性はポンパドール夫人だということです。ふむむむ。
上の階も家具、絵、盛りだくさんなのですが、ギリシャ神話を描いたたたみ三畳ほどもある、大きな絵。これは、当時のひとならだれでも知ってる、ギリシャ神話に基づいています。
エチオピア王ケフェウスの王妃カシオペアが、その美しさの為に罪をおかし、娘アンドロメダを鯨の魔物の生贄に差し出したところ、勇士、ペルセウス(その目を見たら石になるという怪物メデューサを退治して帰ってきた)がその生首を魔物に見せ、石に変えてアンドロメダを救い、ふたりは恋に落ち、めでたく結婚して、一生幸福に暮らしましたとさ、というお話の絵です。
絵は洞窟に鎖でうながれたアンドロメダが大きく左に、海上にはその魔物、上からペルセウスがまさに助けに来てる。で、対岸の遠くには王と王妃とおぼしきカップルがはるかに小さく描かれている。ふむふむふむむ。
これが侯爵家の倉庫に長いことお蔵入りしていたのを、ウォレス卿が見つけ「うん、これのいい置き場知ってる。うちのバスルームにおいとこう」と持って帰ったらしい。なんと風呂場にあったのが、有名なティシャンのギリシャ神話シリーズ連作のひとつで、どこかにあると、専門家の間では捜し求められていた、まさにその作品だったのです。しかし、こんな大きい絵を置ける風呂場というのを見てみたい。。。住んでみたい。。。。むむ。
いつも美術館や博物館に行って思うことですが、昔(15世紀から19世紀にかけて)のものってなんで、こう素晴らしいのだろう、と。。たとえば、陶磁器。
柄、色、かたち、絵付けなどどれをとっても、今の技術では再生できないつくりです。
人間は進歩しとるはずやのに、今、同じものを創れと言われてもできないでしょう。
昔はそう、貴族や王族などが、金と時間に任せて、お抱えの専門家を雇って、自分たちだけのためにつくる余裕があったんでしょうね。
今、たとえ同じものができたとしても、コストを考えると、とんでもない。
さて、なぜ本家おフランスのヴェルサイユ宮殿にもないものが、ここロンドンの狩猟館の一角にあるのか?
これはフランス革命のどさくさで、貴族たちが自分たちのものを売ったり、盗られたり、しました。買ったのは主に「かねもち」イギリス王家とその貴族たち。
ロイヤルファミリーのコレクションは一般にすべてを公開されていませんが、こういう個人の貴族のものはわたしたち平民も見ることができるのです。
それというのも、継ぐはずの後継ぎがいなかった、ウォレス夫人が遺言に「このコレクションをすべて政府に寄贈」したからです。すごい太っ腹やと思いません?「屋敷の外には出すな、貸し出しするな」というような条件付きとはいえ、すごい(としかいいようのない?)財産です。
パリの香水店のいち売り子だった夫人が、見初められてイギリスの貴族のお落胤と結婚し、爵位はもらえなかったが財産だけもらってその父親や祖父の集めたものに加え、金にあかして買ったものすべてを国に譲ったのです。
わたしやったらでけへんわ。おなかは出てるけど、太っ腹にはなれん。欲がまだ勝ってるもんね。二度のショックで厭世的になったはずやのに。まだまだ人間でけてへんわ。
ロンドンに限らずですが、ヨーロッパは「掘り出しもんの宝庫」美術館・博物館が山とあります。素晴らしいのは個人が集めた貴重な展示品がいまのわたしたちに見れるということ。それもほんのいくらかの見物料で。ちなみに、この Wallace Collection は無料で見れます。どうぞわれとおもわん方は寄付してください。ということです。また、ガイドさんはボランティアの方が、ほとんどらしいです。けっこうお年を召したかたが多いといろんなところでガイドツアーに参加すると感じます。
シェークスピア・グローブ座のガイドツアーに参加したときも、白髪のかわいいおばあさんが、白いセータに黒のロングスカート(すそにレースのペチコートが見え隠れする)といういでたちで現れ、もと舞台女優さんだったよな、きっと、ってかんじで、ユーモアとジェスチュアいっぱいに楽しく、説明してくれました。
こういうひとたちを見ているとほんと、勇気づけられます。自分の仕事を好きで、誇りを持ってやってる、っていう感じです。わたしももっと自分の仕事に誇りを持たなくては???と身につまされます。
去年2000年のミレニアム事業で、今まで、一般に公開されていなかった、個人のコレクションや、昔の貴族の館や国の施設などが、次々と公開されました。
百聞は一見にしかず。ぜひ、ロンドンにお寄りの節には、コレクションの穴場、Wallace にぜひお越し下さい。ウォレス広報係でした。
また、ガイドツアーもあり、平日が多いのですが、一般のツアーのみならず、テーマごとにあるというのもすごいです。「家具について」「セーブルについて」などのツアーにはもう一度ぜひ行ってガイドさんの説明を聞いてみたいと思います。
ウエブもあります。 Wallace collection
でも、これってほんと、「イギリスの太っ腹」やわあ、と思います。
この太っ腹の続きは次回「ロンドン・オープン・ハウス」にて。
注)ギリシャ神話のくだり は 我が妹 大北ゆかりの監修による。
2001年9月26日
また「くぼみずほ」読者のみなさま。村野せんせいというのは「なぜわたしがロンドンきまぐれ便りを書くハメになったか」のテーマ時に重要人物となりますので今からこの方のお名前は覚えておくように。それでは、いってみます。
注)「この色は村野ガイドの説明より引用」
9月8日 ロンドン。天候:晴れ。ロンドンにはめずらしく秋の晴天なり。
青空のもと、村野とくべつガイドに魅かれ(引かれ?)、ひごろ村野せんせいに紀行文の材料提供をしている旅行会社の予約スタッフ(ほとんどが見目麗しく、若い女性スタッフということにしておこうかな?意義のあるひとはのべよ)5人が集まりました。
専門的ガイド・説明は、たとえばイギリス在住のみなさま、もしくは日本のみなさまなら、ロンドンにいらっしゃる折に、親切懇切丁寧な村野専属ガイドの説明を聞いていただく方が、わたくしなどの素人が僭越にも説明するまでもないのですが。それは村野ガイドに任せるとして、わたくしはしろうとの視点から述べさせていただこうと思います。
Wallace Collection とはなにぞや?
ひとことで言ってしまうと、Wallace さん、というおっちゃんが(なんて、親しそうに言うけど、えらい貴族なんです、これが)えらいというのは、Noble でも Great でもなく、Much てとこかな?
ますますわからん。ま、ひとくちに貴族といってもほら、ヨーロッパ社会のこと、いろいろあるんです。これまた説明してると一冊終わるので、とりあえず、適切な日本語訳かどうかわかりませんが、侯爵さんってとこかな(イギリス英語では Marques Wallace)。この方は「正真正銘のかねもち」ま、親からもらった財産にまかせていろいろ買っては集めたんですな。
落語みたいな出だしになってしまいましたが、イギリス人というか、こっちのひとって、とかく収集癖があるひとが多く、なんでも集めます。わたしはアンティークを見に行くのが好きで、いろいろとそういうコレクターズ・フェアなんかがあるとヒマもないのにロンドン中、近郊、行ってますが(もちろんお金はないので買いません。いや、買えません。目だけ肥えます。。。。)。
昔の貴族(今の貴族もか?)って、いろいろ集めては飾っておかれるのがお好きなのですね。ま、お住まいもご立派なので、置くものもたくさん立派なものが必要となる。
ステイタスでしょうね。
タンス、椅子、テーブル、書棚などの家具、と、忘れちゃいけない絵画などの調度品。これもそのへんの画家の作品とちゃいます。ヴァン・ダイク、ルーベンス、ブーシェ、フラゴナールなどなど。本物でっせ、ほ・ん・も・の。
いくらで買ったか、というのが、当時巷で話題になったり、コナン・ドイルがシャーロック・ホームズの小説の中で、書いたっつうんですから、そのくらいの価値ありの絵画だらけです。
まだまだあります。シャンデリア、陶磁器も。はんぱなもんやおまへんで。これが。
みんな、貴族・王族のいわく因縁付き。
当時の内装そのままに、復元しているところも多く、こういう背景だと、なるほど、こういう家具なんかがないと様(さま)にならんよなあ、って感じですけど。
特にウォレス館(こんな言い方をすると、村野ガイドにおこられてしまうかもしれませんが)でわたしたち平民が今21世紀の世に自分の裸眼で見れるコレクシオン(フランス語っぽく発音してね)というのがなんと、フランスのものが大半で、また有名なのです。
価値があるから有名になるんですね。がらくた集めてもだめやもん。半端じゃない!
それも主なものが、18世紀ルイ14世のフランス革命前後のもの。
イギリスのロンドン。シャーロック・ホームズの舞台となったベーカー・ストリートからほど近い、こんなところにこんなお屋敷が、という街のど真ん中に、ウォレス館があります。もともとはハートフォード侯爵が住んでいて、Hertford House と呼ばれ、昔貴族たちが住んでいた19世紀のあたりまでは、辺りは森だったので狩猟館として生きていたのです。住所のマンチェスター・スクエアから、Manchester House と呼ばれていたそうな。
このハートフォード侯爵というのはヘンリー八世のお后のひとりジェーン・シーモアの兄弟にまでつながります。その子孫ウォレス卿はいわゆる庶子で、爵位は継承できなかったのですが、財産はほとんど継承したとのことです。
考えても見てください。
2001年に、ロンドンのど真ん中で、18世紀にできた狩猟館の中に、ルイ14世や、マリー・アントワネットが使っていた、家具が見られるんですよ。ヴェルサイユ宮殿には今行ってもないのに。
マダム・ポンパドール(ご存知ルイ14世の愛妾)が使ったほんわかピンク色がとってもキャピキャピっていう、今の陶器と土がちがい、つくるにとっても苦労がいる、というソフト・セーブルの陶器のお茶セットや、ロシアのエカテリナ女帝が注文したという「お客様おもてなし用600ピースセットの一部」なんてのが見られるんでっせ?
「わたしはこのターコイズ・ブルーが好きなんだから、この色にしてね、600セット」ってさらっと注文してみたいもんやわ。一生に一回でええから(またちよっと興奮しとります)。
わたしゃ、個人的にはマリー・アントワネットの家具の趣味の方が、好きかな。シンプルでね。ごてごてしてるロココスタイルよりは上品で気品があると感じます。
こういうのを見るのも、ただ見るだけより、説明を聞きながら事情をわかりながら見るともっと興味が増しますね。
たとえば、二番目の部屋にある、唐草模様のようなロココ様式の飾りのついたルイ14世の部屋にあったという「引き出しのあるテーブル」。
「彼が熱にうなされて、死の床にあったとき、昔は灯りはろうそくだったので、このテーブルの模様が、ろうそくに照らされ、地獄の炎のように見えた」そうです。ふむふむ。
上の階に行く、ご立派な階段の踊り場を上がると、大きなブーシェの絵が。ポンパドール夫人御用達というこの絵描き。ピンクの好きな彼女の好みとおり、全体にパステルピンクというか、ピーチ・オレンジがほんわかしてます。太陽神アポロンをルイ14世に見たて、「朝のはじまり」と「一日の終わり」を描き、アポロンを両手をひろげ、迎えている(のか追い出しているのか?)女性はポンパドール夫人だということです。ふむむむ。
上の階も家具、絵、盛りだくさんなのですが、ギリシャ神話を描いたたたみ三畳ほどもある、大きな絵。これは、当時のひとならだれでも知ってる、ギリシャ神話に基づいています。
エチオピア王ケフェウスの王妃カシオペアが、その美しさの為に罪をおかし、娘アンドロメダを鯨の魔物の生贄に差し出したところ、勇士、ペルセウス(その目を見たら石になるという怪物メデューサを退治して帰ってきた)がその生首を魔物に見せ、石に変えてアンドロメダを救い、ふたりは恋に落ち、めでたく結婚して、一生幸福に暮らしましたとさ、というお話の絵です。
絵は洞窟に鎖でうながれたアンドロメダが大きく左に、海上にはその魔物、上からペルセウスがまさに助けに来てる。で、対岸の遠くには王と王妃とおぼしきカップルがはるかに小さく描かれている。ふむふむふむむ。
これが侯爵家の倉庫に長いことお蔵入りしていたのを、ウォレス卿が見つけ「うん、これのいい置き場知ってる。うちのバスルームにおいとこう」と持って帰ったらしい。なんと風呂場にあったのが、有名なティシャンのギリシャ神話シリーズ連作のひとつで、どこかにあると、専門家の間では捜し求められていた、まさにその作品だったのです。しかし、こんな大きい絵を置ける風呂場というのを見てみたい。。。住んでみたい。。。。むむ。
いつも美術館や博物館に行って思うことですが、昔(15世紀から19世紀にかけて)のものってなんで、こう素晴らしいのだろう、と。。たとえば、陶磁器。
柄、色、かたち、絵付けなどどれをとっても、今の技術では再生できないつくりです。
人間は進歩しとるはずやのに、今、同じものを創れと言われてもできないでしょう。
昔はそう、貴族や王族などが、金と時間に任せて、お抱えの専門家を雇って、自分たちだけのためにつくる余裕があったんでしょうね。
今、たとえ同じものができたとしても、コストを考えると、とんでもない。
さて、なぜ本家おフランスのヴェルサイユ宮殿にもないものが、ここロンドンの狩猟館の一角にあるのか?
これはフランス革命のどさくさで、貴族たちが自分たちのものを売ったり、盗られたり、しました。買ったのは主に「かねもち」イギリス王家とその貴族たち。
ロイヤルファミリーのコレクションは一般にすべてを公開されていませんが、こういう個人の貴族のものはわたしたち平民も見ることができるのです。
それというのも、継ぐはずの後継ぎがいなかった、ウォレス夫人が遺言に「このコレクションをすべて政府に寄贈」したからです。すごい太っ腹やと思いません?「屋敷の外には出すな、貸し出しするな」というような条件付きとはいえ、すごい(としかいいようのない?)財産です。
パリの香水店のいち売り子だった夫人が、見初められてイギリスの貴族のお落胤と結婚し、爵位はもらえなかったが財産だけもらってその父親や祖父の集めたものに加え、金にあかして買ったものすべてを国に譲ったのです。
わたしやったらでけへんわ。おなかは出てるけど、太っ腹にはなれん。欲がまだ勝ってるもんね。二度のショックで厭世的になったはずやのに。まだまだ人間でけてへんわ。
ロンドンに限らずですが、ヨーロッパは「掘り出しもんの宝庫」美術館・博物館が山とあります。素晴らしいのは個人が集めた貴重な展示品がいまのわたしたちに見れるということ。それもほんのいくらかの見物料で。ちなみに、この Wallace Collection は無料で見れます。どうぞわれとおもわん方は寄付してください。ということです。また、ガイドさんはボランティアの方が、ほとんどらしいです。けっこうお年を召したかたが多いといろんなところでガイドツアーに参加すると感じます。
シェークスピア・グローブ座のガイドツアーに参加したときも、白髪のかわいいおばあさんが、白いセータに黒のロングスカート(すそにレースのペチコートが見え隠れする)といういでたちで現れ、もと舞台女優さんだったよな、きっと、ってかんじで、ユーモアとジェスチュアいっぱいに楽しく、説明してくれました。
こういうひとたちを見ているとほんと、勇気づけられます。自分の仕事を好きで、誇りを持ってやってる、っていう感じです。わたしももっと自分の仕事に誇りを持たなくては???と身につまされます。
去年2000年のミレニアム事業で、今まで、一般に公開されていなかった、個人のコレクションや、昔の貴族の館や国の施設などが、次々と公開されました。
百聞は一見にしかず。ぜひ、ロンドンにお寄りの節には、コレクションの穴場、Wallace にぜひお越し下さい。ウォレス広報係でした。
また、ガイドツアーもあり、平日が多いのですが、一般のツアーのみならず、テーマごとにあるというのもすごいです。「家具について」「セーブルについて」などのツアーにはもう一度ぜひ行ってガイドさんの説明を聞いてみたいと思います。
ウエブもあります。 Wallace collection
でも、これってほんと、「イギリスの太っ腹」やわあ、と思います。
この太っ腹の続きは次回「ロンドン・オープン・ハウス」にて。
注)ギリシャ神話のくだり は 我が妹 大北ゆかりの監修による。
2001年9月26日
コメント
コメントを投稿