5 アンティークなわたし  

写真は後から

今回は長いで。。。
でたあぁ!とわたしを知ってるともだちなら思うでしょうね。みずほちゃん、アンティーク好きなの知ってるって。アンティークって言うとかっこういいけど、ようわからん、とおっしゃる方のためにご説明いたしましょう。
日本にいたときから大阪の百貨店でも「英国・アンティーク家具展」なんて催し物が来ると、いそいそ見に言っては、エゲレスの古い家具は雰囲気があってよろしいなあ、と思っていたのですが、その「家具展」に一度行ったとき。
隣に中年のおばさんがいて、「アンティークってなんやのん?」と言いながらうろうろされてて、「あ、そうやこれって中古品やなあ」で落ち着いてしまわれたのには「ガックリ」きましたけど。 そう、簡単に言うとそう、中古なんです。そなんですけどね。
うちの家にも今は亡きおばあちゃんが使ってたという、大正時代かの黒い羽根のついた扇風機とか、皮のバンドの切れかけた足踏みシンガーミシンなんてのがあって、ずっと物置にじゃまそうに置かれていて、母はいっつも捨てたがっていました。
わたしが気に入って、「捨てずにおいといてね」と言ったにもかかわらず、ついにあるとき、大型ゴミに出されてしまいました。ひとの言うこと聞かない娘似の母です。ああ、くやし。
そりゃあ、高くは売れないとは思うけど。高く売る気もないけど、どうして日本人ってなんでも、み~んな捨てちゃうの?
その点、イギリス人はほんと、古いものが好きです。古いというだけで価値があるわけではないけれど、古いものを大事にします。家も古いし(築200年なんてざら)、庭も古いし、ひとも古いんだけどなあ。歴史も古いわい。
このごろ日本でも、骨董品(そう、骨董品というと値打ちがあるみたいですが)流行っているようですがふるゥ~いタンス。とか。足置きの台、とか。花瓶など。おばあちゃんたちの持ってたものをそのまま置いといたら値打ちあったのに、って感じ?
イギリスでは田舎のどこでも、小さな街々では、週末になるとアンティーク・フェアが催されます。協会が開催しているすごいのから、ただのそれこそ町内会の「がらくた市」まで。
テーマもあるんですなあ。専門的っつうか。目的別っつうか。これがイギリス人気質。かな?
「切手とコイン」「陶磁器」「イギリス家具」「大陸ヨーロッパ家具」「テディベア展」「ミニチュア家具と人形」「レースと刺繍」などなど。
いわゆるコレクターズ・フェアというのが地方の大・小都市の「農業会館」とかで催される、テーマ別市。 そんなに高級品はきませんが、ひとつ間違うと Junk =ガラクタになってしまい、期待はずれの場合もあります。
ま、このアンティークとジャンクの違いがむつかしいところで、値段だけで判断はできませんが。でも、結局こういうものの価値はそのひとが決めるもので、いいかと思います。好きで、これでよし、と思ったら買う。と。
需要と供給にあわせてるってわけです。もちろん、一般的になんでもあり、というフェアもあります。自分の好きなとこだけ見ればいいのでしょうが、欲深いわたしのこと、なんでも首をつっこんでみます。「兵器・刀特集」なんてのはちよっとパスですけど。
アンティークを売ってるおじさん、おばさん達を見ているだけでも楽しいですね。
店(通常は大きなホールとかで、よく見本市などで、ブースをつくりますよね、そういうブースごとにケースに入れたり、飾ったりでおもしろい)にすわって、本よみながら店番してるひととか、携帯電話でひたすらしゃべってるひととか。
あるとき、家具のお店でかわいい椅子があったのです。座るところはソファのようで、サテンの白い布がはってあり、かわゆいピンクの小花柄。わたしの趣味にぴったし。マホガニーの細い肘掛がついています。16世紀のエリザベサンとかなんとか書いてありました。値段はかわゆくなかったのですが、あまりにじーっと物欲しそうに見つめていたのでしょうね。いつのまにか、向かいのブースからやってきた、オーナーらしい上品な白髪の小柄なおばあさんが「すわってみれば」と言います。
「えっ?座っていいの?この椅子に?」
「いいわよ、どうぞ」
で、おそるおそる、1280ポンド*の説明付き値札をつまみあげ、座ってみます。きゃ~、エリザベス朝時代にいるみたい~い。単純なわたし。座高も低いし、足のあまり長くないわたしには適当。
「すわりごこちいいでしょ」とくだんのおばあさん、にっこり。
わたしもにっこり。丁寧にお礼を言って、後ろ髪をひかれながらその椅子をあとにしました。値段がもそっとかわいければな。でもあんなもんだけ買ってどないするんや。
ちなみに、ここでひといき。イギリス歴史のお勉強です。
イギリスは特にアンティーク(主に高級品)を語るとき、歴代の王・女王の治世を使っていうことが多いです。エリザベス朝=エリザベサンは言わずと知れたエリザベス1世の治世の時代(1558-1603)
ジョージアン(ジョージ何世ってのが1から4まで4人ほどいる 1714-1830)
オレンジ公ウィリアム王とメアリ女王の時代 (1830-1837)
ヴィクトリアン(ヴィクトリア女王の治世 1837-1901)
エドワリアン(ヴィクトリアの息子エドワード 7世 1901-1910)

  これで大体の雰囲気はつかめます。その時代の特徴がでていますね。
ま、ヴィクトリアンより古いものってのは世間にそう出回っていないし、あったとしてもとても一般市民には手が出ないほどの値がついてます。家なども時代によってジョージアン式タウンハウス、とかヴィクトリアンの出窓、とか言う言い方をします。
これもまた詳しくは別の機会に(わたしってなんて博学なの?なんて。ひとつやるといもづる式にいろんなとこへ行く、またひとつに戻ってくるので繰り返し反復学習がでけるわけです)。そういう意味でイギリスの何をやるにも知るにもまあ、歴史というものが大事になってくるんですな。ね、せんせいたち。はい。
話をアンティーク・フェア会場に戻しましょう。
雰囲気も大切にしますよね。大きなホールでのアンティーク・フェアは、それこそ3階くらいに売場面積がわかれており、レストラン・カフェ完備。階段の踊り場で、4重奏のバンド付き、なんてのもあります。ランチタイムにあわせて、バイオリンが織り成す生演奏をききながらフェアを回る。なあんて優雅なの。おしゃれやわ。
こちらのテレビ番組で「アンティーク・ロードショー」ってのが毎週日曜日の夕方 BBC1  でやってます。ときどき、見て楽しむのですが、一般のひとたちが、アンティークの専門家に自分の持っている秘蔵の品々を鑑定してもらうというやつです。日本でも、似たような番組があったと思いますが、決定的に違うのが、こちらは田舎の町とかに、アンティーク・フェアがあるときに行って(それもだいたいお城あととか公園とかのあるマナーハウスとかで開催されるからテレビを通してその地の観光もできる。わたしにとっては一石二鳥!)地元のひとたちが続々持ち寄って見てもらうんです。TV 局のスタジオへ行くのとはちゃう。持ってくるものもさまざま。宝石や時計などの小さなものから家具、絵、置物などの大きなものまで。
で、そのへんのおっちゃん、おばちゃんが、専門家に「これはどうやって手に入れたんですか」とか聞かれてその謂れをえんえん、説明するわけです。
「これはねえ、わたしのひいひい~おばあちゃんの時代にあったものをおばが結婚祝に銀のセットで、わたしにくれた」とか。
「ふむふむ。ここにサインがありますね。1718年なんとかスミスとメーカーの名前と刻印が入っています」
と専門家。
「この青いオリエンタルな模様がすばらしい陶器のランプ台、一見して中国のものに見えますが実は違うんですな」
「ペルシャかどこかと思ってましたわ」
「いや、オランダです。この時代にはオランダで当時一番すすんでいた中国の陶器の模様を真似して青い模様の陶器をつくってたんですな。ほら、ここ、この底にマークがある。これはデルフトの窯元のマークです」
「これはおもしろい。枠は17世紀のものだが、そのあとで、この引き出しを付け足してますな」
「ここで色がかわっているが、あとからつけたものと思われます。ただうまくマッチしている」
で、好きなのが、最後。専門家がこのマホガニーテーブルの価値はいくらくらいと思うか、と視聴者に聞くとき。説明した最後は必ず現在の価値を値段で言います。
「今の価値でいくらくらいと思います?」
「うーん、想像もつかないわ」(この想像もつかない、も視聴者の常套文句)
「低くみても4-5000ポンドですな」
その「4-5000ポンドですな」というやいなや、このおばちゃんの顔が微妙にびっくりするの。「ええぇ。考えられない」っつうか。うっそお、っていう感じでもないし、期待してなかったというのでもないん
だけど、遠慮がちに喜びを表してるって感じ。
この反応を見るのがわたし、いつも好きです。へんなやつ?ひとのものなのに?
「25年前に近所のガラクタ市で30ポンドで買った」
「で、これは今の価値でいくらと思います」
「うーん、わからんなあ」
「きわめて精巧にできているし、破損も少ない。低く見積もっても500ポンドはくだらんでしょうな」
で、また、喜びの顔。
ふしぎなことに、安いのってないのね。みな高く売れる?みたい。
でも、きっとこのひとたちは売る目的じゃなく、それを「所有している」ことが誇りというか、喜びなんでしょうな。でも、そんな価値のあるものが毎回毎回続々出てくるってのもすごい。大阪で一家に一台必ずたこ焼き器がある、というのと同じように、イギリスの田舎の家には一家にひとつは価値ありの骨董品がある!
ロンドンの定期的な大きなアンティーク・フェアは平均して月に2回から3回あります。だいたいのには行きました。とっても高級なため息しかつけない・目がこえるだけ、のものから、けっこうこれだったらわたしでも買えそう(と言いながらお皿いちまいとかカップひとつ買ってくるのがせいぜいだが)というものまで。もう、フェアの名前を聞いて、どこが主催してるか聞くだけで「あ、今日は見るだけ」とか「ちょっと買ってもええかいな」と判断できます。
ものを見ても、いくらくらいと判定はできませんが、「高い」か「安い」かくらいはわかります。
「ふむむ。これはきっと高いで。いいもん。きっとええ値ついてるわ」と思うと、ピンポーン。
わたしってなんて眼が肥えてるの?とうれしくなります。だれかこの才能?をカネで買ってくれい!
ロンドンのみならず、地方の都市でももちろんあります。北の中世の雰囲気を残す町、チェスターでも年に2回くらいあります。今年は2月にアンティーク・フェアのために行きました。
北野せんせい、チェスターはわたくし、むかぁ~し貧乏学生だったときに一度行きました(あ、今でも貧乏ですけど)。チェスターはアリスのチェシャー猫、チェシャーチーズで有名?な、チェシャー州にあります。いわゆるブラック・アンド・ホワイト*の建築様式が残る中世の面影を残す城壁の街です。
イギリス田舎町シリーズはまたの機会ということで、チェスターのアンティーク・フェア会場は競馬場の中のクラブハウスでありました(なんか高級な匂いがするでしょ?)。
チェスターはそんなに大きな町ではありませんが、まわりを城壁に囲まれています。その城壁を歩くこともできます。その城壁の外側、町の西側にどでか~い競馬場があります。競馬場といってももうほとんど公園。日本の殺風景な仁川の競馬場とか、東京はなんというのでしょ、そういうのとはちと違います。緑の芝生が延々、続き、一見するとひらたいグリーンの中にレースコースがあるって感じです。
この日はイギリス北部特有の冬の曇り空と深い霧に覆われて、いっそう、白と緑が幻想的でした。
何回かこの主催者のアンティーク・フェアに行ってるし、年間通してのただ券をもらったので、わざわざ?チェスターまで行ったのでした。電車代と宿泊代の方が高くついてるで。しかし。チェスターはもう一度来たかった町でもあるし、宿もほんと旅篭っていう感じの Black & White 造りの古いホテルに泊りました。部屋の中に黒い木の梁があり、壁や、床もかたむいてるの。
で、フェア自体は全国いろんなところから出品に来ているアンティーク行商さんというのか、いつも見るような方たちもおられました。みんな、来ているお客さんも余裕のあるひとが多いかんじで、でもそんなにわたしが、ついていけないようなひとはいないようです。観光・飲食以外にこういうふうに、イギリスの田舎めぐりをするのもまた一興です。ぜいたくかな?
ロンドンのみならず、近郊でもやっています。ロンドンから日帰りできるところは女王様のお城のあるウィンザーとか。コッツウォルズまで行かなくても南のペッツワース、東のキングストンは一度行ってみたいです。日帰りじゅうぶんできますから。
ロンドンの南、鉄道で1時間くらいのところにギルドフォードという町があります。そこに住んでるともだちに近くの週末アンティーク・フェアに何度か連れて行ってもらいました。冬の雨の日曜日なんてのは、こういうショップめぐりにぴったし!というか他にすることがないからっていうことも言えるのですが。けっこう暇つぶし?になります。
ショップといっても、けっこう広くて迷路のように売場が上へ下へ、中二階へ、とところせましといろんなものが置かれていて、ひとつひとつ見ていくだけでも楽しいです。
さすが、郊外に行くと、ロンドンよりかなり安い。この近くは日本人もときどき、家具とかを買いに来るわよ、と友人が言っておりました。そうよね、日本で買うよりずっと安いだろうし。
ロンドンに戻り、市内のアンティーク・マーケットもたくさんあります。週末だけ、とか曜日が決まって市がたつところ。有名なところではコベント・ガーデン。ポートベロ、カムデン、エンジェルの近くのカムデン・パッセージ。
一番のお気に入りはポートベロですかね。土曜日に早くに行かないといけません。奥(北へ)の方へ行くと、野菜や花市や日用品の市(屋台)も出たりして、楽しめます。
カムデンは若者と観光客でいつもごった返してて、古着とかが多いって感じです。だいぶん庶民的かな。コベントガーデンは観光客が多いですが、こじんまりといろいろあるので、見るのは楽しいです。近くに他の店とかもあって、雰囲気を楽しめます。
しかし、あります。あります。いくらでも、という感じですね。いいものを見分けるのはむつかしいのでしょうが、それは専門家に任せるとして、わたしはわたしの力量の範囲で、これからも「見る」ことに楽しんでみようと思っています。
うまく、アンティークディーラのおばちゃんになれたあかつきには、あなたも椅子に座らせてあげるわよ!

作者注)

*1ポンドは2001年11月現在 おおまか 約180円とお考えください。
ほら、電卓、電卓。

Black and White シェークスピアの生地で博物館のあるストラットフォード・アポン・エイヴォン
=エイヴォン川のほとりのストラットフォード でよく写真とかに見られる、屋根の梁が白と黒って
いう建築様式です。勉強になるなあ。イギリスの北東まんなからへん(ようわかるわ)Suffolk
の方に行っても、見られます。

2001年11月2日  

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