31 国会議事堂よりクリスマスまで

お宅訪問第3弾。といっても、ここは天下の国会議事堂なんですがね。行ったのは不規則的に一般公開していた10月の4日だったんですが。
ここをひとまわりするだけで、イギリスの中世から現代まで、お勉強ができちゃいます。
中は勝手に動き回ることは許されず、ガイドさんといっしょに30人くらいの小グループに別れて説明を聞きながら回ります。ガイドさんは、入る前に、どこからきたの、とイギリス以外のどこの国のひとたちかを把握していました。
正式名はウェストミンスター宮殿、それを13世紀くらいから国会議事堂に使っています。再三の火事などで、焼け落ちたり改装して、現在のゴシック様式が完成したのは19世紀。第二次世界大戦でも打撃を受け、入り口にあたるウエストミンスターホールのみ傷を受けずに現在に至っています。
厳しいセキュリティチェックを受け、ウエストミンスターホールを横手に見ます。ウエストミンスターホールは何年か前の(3)ロンドンオープンハウスでPortcullis House を見に行ったときの入り口と同じで、このセキュリティチェックのあと、ホールからビッグベンの方向にあるPortcullis Houseに入ったのですが、今回はあっちゃへ行かず、こっちゃ。
ほんとに宮殿でして、絵画や装飾やきらびやかさは古めかしいですが、威風堂々。いくつもの大ホールやギャラリーを通りぬけ、たしか、上院に入る手前にあった小さな続き部屋だったと思うのですが。歴代の王と王妃がテューダーから(というとヘンリー七世からなのよん)肖像画を連ねてあり、きらびやか。ヘンリー八世の6人の妃も全員勢ぞろい。
わたしには新鮮な驚きだったのが、アン・ブリン*の画の装束が白地に青の花柄っちい、きんきらの派手派手なもの。イメージとしては赤いけど、おとなしげな芯のしっかりした、という勝手な思い込みだったのですが、ちとびっくりかなあ。あの描きようは。テレビドラマでヘレナ・ボナム・カーター(「眺めのいい部屋」で主人公のお嬢様やってたひとよ。実生活は派手っぽいらしいんだけど)が彼女の役をやってたのを見ましたが、これもけっこう気の強そうな役どころでしたなあ。またもここでふむふむ。
むかしのひとって、肖像画や残された文書からしか推し量れないから、残っているものが少ないとなかなか難しいかも。いろんな角度から歴史の人物を見るのも興味深い。
上院と下院の差はありましたね。
はじめ、両側にふかふかいすのある、天井からマイクのようなものが細いひもとともにたくさん七夕のようにぶら下がっている、ひろぉいお部屋に来たとき、これや、どっかで見た。そうテレビでやってる国会討論の場面。でも全体的に赤いしきらびやかやなあ。ちょっとちがうかも?そう、これは The House of Lords (上院)だったのですね。女王様がいらっしゃるときの玉座もあり。国会開会宣言はここでするんですね。階段席の一番上に一般人が見学できる廊下のような席があるのですが、近代になって女性が見学に来るようになり、スカートから女性を守るため、カーテンのようなものが前につけられております。確かにスカートで座ってしまったら、下から見えるわな。
さて、上院を出、下院に行くまえにはセントラルロビーを通らねばなりません。ホールの4つの角には歴代の近年の政治家の等身大の銅像があり、ひとつはあのチャーチル「首相」です。そのチャーチルの青銅の足、片方の先がきんぴか。ホールの説明をしているガイドさんのことばを右耳で聞きながらも左目はその金ぴかの足に注目。あれってなんであそこだけきれいやの?みんなが触るからやろなあ、なんかご利益でもあるんでっしゃろか?なんのご利益が?と関西人っぽく考えているうちに、ガイドさんはそれにも触れ答えをだしてくれました。
新米(しんまい)議員は国会討論での初のスピーチが成功するように、と下院に入る前に触っていくそうです。触って何かにご利益を期待するのは古今東西同じですねえ。触るの好きなわたし。ヴェローナとピサに続き?**
ガイドさんが、「じゃあ、これから下院に参りましょう、チャーチルの足を触りたいひとは触って入ってもいいですよ、向かいのロイドでも」なんて促すもんで、しっかり触ってきました。スピーチがうまくなってもなんもならんかあ?ま、損得で物事考えちゃあ、いかしませんぜ。
The House of Commons (下院) はテレビで見るとおり、長椅子がグリーンのカバーです。真中に四角いテーブルがマイクつきであり、ぐるっと取り囲むように長椅子が階段状態で何段かあります。しかし、ここでは椅子があっても、一般人はすわっちゃだめ。MP***のみが座れるのです。   
来年度の目標ができました。
今度はビッグ・ベン(国会議事堂に隣接する時計台、ロンドンのシンボル?)に登るぞ。

筆者注)
*アン・ブリン 前回にも出ましたがおさらいしとくと、ヘンリー八世の2番目のお妃。
エリザベス一世の母。結婚後わずか三年で打ち首。Beheaded.
** ヴェローナのロメオとジュリエッタの家のバルコニーの下のジュリエッタ像の右胸に触ると幸せな 
結婚ができるという。ピサのドォモの青銅の戸扉のとかげに触るとこれまた幸せな結婚ができる
って。
国会議事堂のチャーチル首相の足は「完璧なスピーチができる」と新米の国会議員に信じら 
れているらしい。

*** MP = Member of Parliament 国会議員。

<年末特別付録>
短かったので特別クリスマス付録。クリスマスらしいお題をひとつ。落語やないで。
実はこの前、イギリス映画「Love Actually」というのを見ました。邦題はなんていうのかなあ、興味しんしん。「愛のクリスマス」とかかなあ、ちとださい?日本でやったらぜひ教えてください。邦題を。パリでも封切られていました。原題そのままで。
「フォーウエディング」の監督で、出演キャラもほとんど似たようなひとたちが出てるのですが、これが「ロンドン」!っつうか、「イギリス」!っつう映画。ちよっと、いやかなりドタバタのロマンスコメディって感じですが。ヒュー・グラントがなぜか「プライムミニスター(首相)」。あんまし、似合ってないよなあ。「マイフェアレディ」の舞台にも出ていたマーティヌなんとかがお相手で、いろんなカップルや友人たちがオムニバスに繰り広げる人間ドラマ。エマ・トンプソンが渋い味、出してましたね。
花嫁役で初めに出てきた女性がすごくきれいだったし(名前忘れた)現在のイギリス社会の皮肉っつうかもけっこうあって。ヒュー・グラントをプライムミニスターにしたのもそうなんでしょうが、そのへんの政治的ひねりはようわからんかった(あるのだとすれば)。
あるイギリス男がアメリカめざして女性ハントに行くのですが、出会ったアメリカ女性がみんな「イギリス男にぞっこん」な素敵なおねえちゃんばっかで、これって、きっと女優のグィネス・パルトローがいつぞや「イギリス男はたよんない、アメリカ男がいい」と非難していたのを反対に返してるんじゃないかと。
コリン・ファース(「ブリジット・ジョーンズの日記」のMr Darcy役)はなかなか 「 」いいね。あ、もとい、かっこいいね。ミスタービーンもセルフリッジ(デパート)の店員役で登場。搭乗もじゃまするんやけど(これは映画を見ないとこのわたしの韻踏みはわかりませんでしょうなあ、とわけわかめになってきたのでそろそろやめよう)
あ、忘れてならない、リアム・ニーソンのstepson 役やってた男の子がかわゆかったわ。息子がなんで父親のことをダディ、じゃなく、ファーストネームで呼んでるんやろう、との疑問は奥さんの連れ子だったということで疑問解決。
みんな最後にはつながっていくのですが、どこをどうつなげていくのかおもしろい。
そこらじゅうにロンドンがいっぱい散らばっていて、ロンドン好きの方にはこたえられない映画です。美しいというか、いまやマンネリ化したリージェントストリートのクリスマスライトも堪能できます。やっぱ、ロンドンも映画になるとフォトジェニックかあ?
ぜひ季節物で、見てくださいな。あったかなひとたちのあったかいこころがクリスマスシーズンだけでなく、一年中続くことを祈る気持ちでいっぱいになりました。ロンドンの広報係りでした。あ、忘れてた。最初からでてくるビリーなんとかというおかしなロック歌手がいるけど、これは説明するまでもなく、まあ観てくださいな。おもろいから。
これが今年最後のロンドン便りとなると思います。ではみなさまも、良いお年をお迎えください。来年も引き続きよろしゅうお願いいたします。

2003年12月11日                               
© Mizuho Kubo , All rights reserved…..December, 2003

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